最近では、豊洲市場の話題も記憶に新しいマンションの「地下ピット」。
普段は人が出入りする場所でもなく、簡単に入れないよういなっていますので、その存在すら知らなかった、という方もいらっしゃるかもしれません。
地下ピットは簡単に言うと、マンションの地下部分にある排水管などをメンテナンスするスペースで建物の基礎にあたる部分です。
一戸建ての「床下」をイメージして頂くとわかりやすいでしょう。
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目次
地下ピットでわかるマンションの施工状況
マンションの地上部分の柱や壁は外壁タイルや塗装、室内は内装材で覆われていますが、地下ピットはコンクリートのままで何も仕上げられていない状態です。
そのため、躯体の状況が確認しやすく、コンクリート躯体の良し悪しがわかりやすい状況です。また、施工不良だけでなく、ひび割れや漏水など、経年や地震による建物の劣化状況を把握しやすい場所でもあります。
ですが地下ピットは、メンテナンスや大規模修繕などの機会に立ち入る程度で、管理会社でも頻繁に出入りするわけではありません。
ちょっとした変化が発生していても気が付けずに、そのままになってしまうケースが多いのです。2年、10年のアフターサービス期限のタイミングでチェックしてみると色々な不具合が進行していることや鉄筋の切断を伴う不正なコア抜き(穴あけ)が発見されることもあります。
さくら事務所の共用部点検で発覚した、地下ピットの不具合をご紹介します。
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マンションの地下ピットで発覚する不具合事例
コンクリートのかぶり厚の不足で鉄筋が露出
地下ピットの中から梁を見上げた写真です。
ここに規則的に茶色の汚れが見えますが、コンクリートの中に埋まっている鉄筋です。
鉄筋は錆びに弱く、アルカリ性のコンクリートで十分に覆っていなければなりませんが、しっかり埋まっておらず、空気中の水分に反応して酸化してしまっているのです。中の鉄筋から錆びが表面に出てしまっています。
鉄筋は錆びるとその体積が増え、コンクリートが内部で爆裂してしまいます。
建物の強度にも関係しますので、早急な補修が望まれます。
コールドジョイント
本来なら一体化しているはずの壁面のコンクリートに隙間ができており、そこから地下水が漏れ出てしまっています。
通常、コンクリートを流した後に追加でコンクリートを流す際、時間が経ってからしっかりなじむよう、型枠材に振動を与えたりたたいたりといった作業を行う必要があります。
それが不十分だった場合、隙間ができてしまったり先に流したコンクリートとしっかり接着できていずに継ぎ目ができてしまうのです。
場所によっては、予定の強度を確保できず、建物への影響もありますので、しっかり補修する必要があります。
コンクリ―トに関しては、これ以外にも、打設の際の型枠が残っていたり、空き缶や電線などの異物が混入していたり、コンクリートが十分にいきわたらず空洞になっていたりとさまざまな不具合が見られます。
コア抜き
数年前、大手分譲会社の新築マンションで、大量のコア抜きが発覚し、契約していたにも関わらず引き渡せぬまま、解体し建て直した例がありました。
コア抜きとは、コンクリートの中に配管や配線を通すための穴をコンクリート打設後に設置することで、もちろん必要な箇所には必須なものです。
ですが、設備業者との打ち合わせが不十分だったり、現場の伝達に不備があると、配管のための穴が確保されていなかったり、違う場所にあけられていたりといったことが起こります。
このような場合、コンクリートを打設した後から配管のために穴を開けてしまうのです。
本来の計画に沿って穴を開けるわけではないので、その際に中の鉄筋などを切ってしまうこともあります。
過去にさくら事務所で行った調査では、100か所以上コア抜きが見つかったということがあり、補修に1年近くの時間を要しました。
排水の不良
地下ピットの中が水たまりになってしまっている状態です。
通常、地下ピットには排水ポンプが付いており、そこに水を流すため、一方向に緩やかに勾配をつけて施工されます。
ですが、コンクリートの床レベルが正確にとられていないと、水を流すための十分な勾配がつけられず、水が流れません。
ポンプがあるところまで水が運べないため、たまった水が行き場を失い、水たまりのようになってしまうのです。
日頃目に見えないところにこそ、施工不良のサインがある
いかがでしたでしょうか?
地下ピットは毎日の生活で居住者の目に触れない分、手抜かりや施工不良が起こりがちということもありますが、そのような部分こそ施工状況がわかるとも言えます。
地下ピットでこのような施工不良があった場合、建物全体の施工状況も心配、という方もいらっしゃるでしょう。
もちろん地下ピットは共用部分ですので、管理組合の共通の所有物になります。
しかし通常は管理会社が管理をしている場所で安全のために施錠されており、居住者が自由に出入りすることはできません。長時間滞在することが想定されていないため、換気扇・換気口などもありません。
酸欠災害を地下ピットで起こして被害者が出たということも時々報道されています。
自分たちで地下ピットに入るのは大変危険です。(さくら事務所が地下ピットを点検するときでも地下ピットの中だけは同行をお断りしています。)
施工状況が気になるという方は、まずは専門家に相談しましょう。また、以下のEbookもぜひご覧ください。
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