近年、問題にもなっているマンション修繕積立金不足の問題。
長期修繕計画の見直しから、将来への備えに向けて修繕積立金の見直し・増額を行うマンション管理組合も多いでしょう。
そんな中、「マンションのお金って、居住者から集めるほかに道はないの?」とお思いの方もいるでしょう。
マンション自身に稼いでもらう、つまりマンションで収益事業を行うという方法もあります。
ここでは実際にマンションで行われている収益事業の具体例と注意点をマンション管理士が解説します。
マンション敷地内に自動販売機の設置
マンションの敷地内に自動販売機を設置して自動販売機業者から売上高に応じて手数料を得る方法です。
居住者も飲み物が欲しいときに敷地内ですぐに買いに行けて便利というメリットもあるでしょう。
とはいえ、エントランスまわりや中庭など、あまり目立つところへの設置は、美観を損ねると反対意見もあるかもしれません。
深夜に灯りつくことで、若い子のたまり場のようになってしまう可能性もあります。
一定の売上(収益)を望むなら、前面道路がある程度明るい、人通りがある場所に設置するのが望ましいですが、上記のような問題も。
自動販売機を設置する場合、その設置場所もマンション管理組合で多いに検討する必要があります。
機械式駐車場の外部貸し
若者のクルマ離れと居住者の高齢化もあいまって、都心を中心に駐車場の空きスペースが目立つようになりました。
空き区画があって利用料が入ってこなくても、駐車場の維持費・修繕費が必要なことに変わりはありません。
機械式駐車場の場合にはメンテナンス費用・交換費用は高額ですので、空きスペースの増加は今後のマンション全体の管理組合の収支にも大きく影響するでしょう。
そこで、その駐車場の空き区画を、外部に貸し出す「駐車場の外部貸し」があります。
最近では、Iotの進歩やシェアリングエコノミーの発想から、スマホやウェブで簡単に登録して1台単位から時間貸しも可能になり、決済もクレジットやスマホで済ませられるなど、そのハードルも下がっています。
収益事業か共済事業か?ポイントはここ!
管理組合の収入は、基本的に区分所有者の管理費と修繕積立金になりますが、これは「管理組合の組合員である区分所有者を対象にした共済的事業」を目的とした収入のため税金はかかりません。
しかし一方、共済事業とはいえない外部からの収入は収益事業と解釈され、一般企業と同様に事業税が課せられます。
マンション居住者外から収入を得るのか?
マンション居住者のみのための施設なのか?
ここが、収益事業かどうか、つまり税金がかかるかかどうか?のポイントになるのです。
例えば、先に挙げた駐車場の外部貸し。
その契約の仕方(貸し出す条件)によって課税される対象が異なってしまうのです。
例えば、管理組合が外部募集を行い居住者も外部者も優先順位などなく先着順で同等に貸し出す場合、駐車場全体が収益事業とみなされ、課税対象になります。
一方で、外部に貸し出すものの居住者が優先ですよという条件を付ければ、その外部貸出部分のみが収益事業とみなされ、課税対象になる場合があります。
参考サイト(外部リンク)
国税庁 法人税質疑応答事例集「団地管理組合等が行う駐車場の収益事業判定」
国税庁 法人税文章回答事例 「平成24年2月13日回答『取引等に係る税務上の取扱い等に関する照会(同業者団体等用)』」
納税申告も忘れずに!注意すべきは損益分岐点
過去にはこの区別があいまいだったこともあり、税金がかかるという認識が薄くマンション管理組合の申告漏れが相次ぎました。
また、税金だけでなく、申告が必要になれば税理士報酬も発生するでしょう。
マンション管理組合で収益事業を検討する際には、税金や税理士報酬といった点も踏まえて、損益分岐点をきちんと計算して行いましょう。
修繕積立金や管理費、管理委託費などマンションのお金で悩むことがあれば、マンション管理士にご相談ください。