目次
羽田空港のルート変更により都心マンションに異変が?
ついに2020年に迫った東京オリンピック・パラリンピック、更には近年増加する訪日観光客。
これらを受けての国際線の需要拡大や国際競争力の強化を狙った旅客機の増便から、羽田空港の飛行ルートの見直しが計画されています。
これにより東京都心の閑静な高級住宅街上空を飛行機が航行する可能性が浮上してきました。
都心や臨海に建つ高級マンションにも少なからず影響が出てくると考えられます。
このルート変更により滑走路が効率的に使用できるようになり、これまでは1時間あたり80回の発着だったものが90回程度になります。
国際線の発着回数も1年あたりで最大3万9000回と、現在の1.5倍程度にまで増える見込みです。
飛行経路の見直しに関しては現在いくつかのルートが検討されており、都心上空の新たな着陸ルートは、15時~19時の時間帯に東京23区の上空を北西から南東へと縦断していきます。
渋谷・目黒・大井町の上空を通過するA滑走路ルートで1時間に13便が、新宿・広尾・表参道の上空を通過するC滑走路ルートでは1時間に31便が運行される見通しです。
高級住宅街やタワーマンションへの騒音の影響
ここで問題となるのが飛行する「高度」と「騒音」の問題です。
新飛行ルートでは渋谷駅周辺を約600mの高度で飛行することになっており、その時の騒音レベルは最大で74dbとなっています。
同様に高度450mで飛行する五反田駅・品川駅では76db、高度300mで飛行する大井町駅では実に80dbにもなります。
一般的に70dbは「掃除機の音」「電車の車内」「騒々しい事務所の中」と同等の騒音レベルとなります。
80dbに至っては、「交通量の多い道路」「地下鉄の車内」「ボウリング場」にも相当する騒音レベルです。
駅周辺や商業施設などが集まるエリアなど元々賑やかな場所であればそれほど問題にはならないかもしれませんが、高級住宅地として知られる青山・代官山・松濤・白金といったエリアでもこれに近い騒音が発生すると考えられます。
特にいま注目を浴びているタワーマンションの場合は上層階に行くほど飛行機との距離が近くなるわけですから、騒音もその分大きくなるでしょう。
そうなればマンションの資産価値にも影響が出てくると言わざるを得ません。
この点について国土交通省では「不動産価格の変動と航空機の飛行との間に因果関係をあるとは言えない」と説明しています。
確かに物件の価値は治安や立地と行った環境面だけでなく人口の増減と行った社会的な要因、さらには土地の有効利用計画など行政上の要因などが複合して決まるものですが、だからといって騒音と不動産の価値に影響がないと言い切るのもおかしな話です。
シミュレーションでは最大で25%の価値下落も
そこで、一例としてロサンゼルス国際空港の例を見てみましょう。
これは1994年にアメリカのコンサルティング会社が連邦航空局に提出した書類の中で示した事例ですが、飛行機による騒音が1db上昇するごとに不動産の価格が1.33%下がるという結果が出ています。
では日本ではどうでしょうか。
ここで1つのシミュレーションを実施してみます。
環境庁が発表する各地点の騒音レベルを基準に上記の例に当てはめてみると、代官山・白金・大井町といった地域では価格が最大25%ほど下落する計算になります。
もちろん、騒音が価格に与える影響はこんなに単純に算出できるものではありません。
たとえばごみ焼却施設・下水処理場・火葬場・刑務所といった悪臭や騒音、治安の問題を引き起こす可能性のある施設が近くにあれば一般的に価格が下がると言われています。
しかしながらその下落率については「騒音レベルが△△db以上だと□%下落する」「下水処理施設からの距離が○○mだから×%下落する」といった基準があるわけではありません。
言ってみれば不動産会社のさじ加減1つといったところで、マインド的な要因が大きいのが事実です。
飛行機の騒音問題も同様です。
どこのマンションでもいつどんな不安要素が生まれるかわからない
実際にどのくらいの影響が出るかは、その時になってみないとはっきりしないというのが実情でしょう。
ただ、前述のようにタワーマンションにおける騒音問題が顕著になったり部品の落下事故などが起こったりすれば、新築・中古問わず資産価値下落の影響がより大きくなる可能性は否定できません。
思わぬ事態、自身では防げない事故、環境の変化で資産価値が下がってしまう可能性はどこのマンションでもあるでしょう。
これまで高値安定していた都心の高級マンションや臨海エリアのタワーマンションであっても決して油断できない状況です。
資産価値維持のために組合でできる取り組みとして、建物を長きに渡り安心して住める建物を維持するべく、日ごろから組合運営に努めることをお勧めします。