管理委託契約の更新拒否!?マンション管理業界の人手不足

  • Update: 2019-08-06
管理委託契約の更新拒否!?マンション管理業界の人手不足

マンション管理組合が日々の業務を委託する管理会社。

管理会社は管理組合にとって、良好なマンションの状態を維持するための大事なパートナーです。

ですが、ここにきて「マンション管理会社に管理委託契約の更新を断られそう」というお問合せが急増しています。

兼ねてから言われる、マンション管理会社の管理員さんのなりて不足が原因とも言われていますが、本当にそれだけなのでしょうか?

深刻な人手不足に悩むマンション管理業界

増加し続けるマンションストックに対し、管理会社では人手不足が深刻化しています。

管理員業務は以前はリタイアされたシニアの第二の働き口ともされていましたが、人手不足に悩む多くの企業で雇用の延長(定年以降も勤務を続ける仕組み)が取られており、シニアの求人も難しくなっています。

将来的に、AIやロボットで代用できるサービスもありますが、難しいのが管理員さん。

その業務の特性上、どうしても属人的になりがちで、そのノウハウのシステム化、データ化は現状では難しいでしょう。

また、清掃員さんなどの不足も同様です。

海外からの働き手を募る管理会社も多く、清掃員の急募に対して、海外から働きにくるスタッフを空港まで迎えに行き、翌日から現場業務についてもらうなどの急ぎの対応でなんとか回している、という管理会社もあるようです。

管理会社変更(リプレイス)の際にも、管理員さん同様に清掃スタッフの確保ができずに難航するケースもあります。

更に、管理会社に敬遠されるマンション管理組合も

これらの背景を踏まえ、委託契約の更新を断る管理会社がありますが、どういった管理組合が要注意なのでしょうか?

管理会社が委託契約の更新に二の足を踏んでしまうような管理組合とは、どのようなマンションなのでしょうか?

①何かと要求の多いマンション

まず第一に挙げられるのが、管理会社への要求が多すぎる、要求のレベルが高すぎる、といったマンションがあります。

例えば、こんなケースです。

  • 契約外にもかかわらず、管理員が「やったほうがいいだろう」と好意から無償で行っているようなサービスにも高いクオリティを求められる
  • 管理委託契約では人員は1名だが、実際に要求されるクオリティのサービスをするために実質ほぼ2名体制でないと回らない

管理会社側からすれば、契約外のことまで無償でサービスしているような中で少し業務が行き届かなかったことを理由に減額を求めらるようでは、「割に合わない」と感じます。

このような、言ってしまえば「手のかかるマンション」の場合、管理会社も「その手間と対価が見合わない」と判断し、契約更新を拒否されてしまうのです。

また、こういったマンションは、スタッフの拘束時間も自然と長くなり、担当者が担当できるマンションの数にも制限をかけることになります。

こういった例はこれまでにもありましたが、近年は人手不足の波をうけ、管理会社が委託契約の更新拒否に早くに踏み切るようになっています。

管理員の時給を見直すために、管理委託費の見直しを提案するも却下され、そのまま委託契約終了という流れもあります。

②「モンスター理事がいる」など、手間が掛かるマンション

モンスター理事やクレーマー住民がいるマンションです。

先ほどの手間がかかるマンションにも含まれますが、清掃や日常修繕、組合会計などの失態を追求し、管理会社に対し委託費用の減額や返金などを求めるような、モンスター理事がいるようなケースです。

管理会社の担当者の対応に満足できない場合、支店長や社長にまで手紙で訴えるようなこともあります。

ちょっとした管理会社の失態を叱責し、それを逆手にとって、本来組合のために必要ともいえる「修繕積立金の増額の提案」まで管理会社に取り下げさせることもあります。

また、居住者の高齢化が進んだマンションでは、初期の認知症や心身の不自由など、一定の介助が必要な居住者が増え、管理会社の負担が大きくなっている、という声もあります。

「なんでもかんでもやってくれて当たり前」というマンションも、管理会社にとってはやりづらいマンションになるでしょう。

③「修繕積立金の残高が少ない」「値上げができていない」マンション

修繕積立金不足に悩むマンションも増加しているとされますが、これも管理会社に敬遠される理由になります。

修繕積立金がなぜ管理委託契約に関係あるのでしょうか?

建物は古くなるにつれ、もちろん修繕に費用がかかるようになります。

新築時の修繕積立金は低く設定されていることから(コラムへ)、長期修繕計画の見直しと併せ、修繕積立金の見直し(増額)を行っていく必要があります。

この修繕積立金の見直しが十分にされていないマンションでは、建物は古くなる一方で、ますます修繕費用が必要になるなか、早晩、修繕積立金不足に悩まされることは目に見えています。

マンション管理組合にとっては死活問題ですが、管理会社からすれば、「計画的な修繕ができないマンションは、いちいち修繕の手間が掛かり、積立金もないので利益も見込めない」と思われてしまうのです。

また、築年数の浅いうちはいいですが、築30年40年となってくると、建物も設備も老朽化し、居住者の高齢化も進みます。諸問題が一度に噴出することもあります。

利益の見込めないマンションと判断され、管理会社から委託契約を拒否されることも多いに考えられます。

増え続けるマンションストックに、管理員のなりて不足

いずれも管理会社としては、ビジネスとして成り立たない、という理由で撤退を考えてしまうのです。

もちろん、管理会社の言いなりになれというのではありません。

管理組合として管理会社に頼りきらずに自立し、共同でいいマンションを作っていこうという、お互いの努力が必要です。

ミスや落ち度を責めるだけでなく、評価すべきところは評価し、信頼できる関係づくりを目指しましょう。

これを機に、管理会社との関係を見直してみることをおすすめします。

管理委託契約の内容、サービスの履行状況など一度、チェックしてみることをおすすめします。

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株式会社さくら事務所

ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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